2019年4月から特定分野における外国人の単純労働が認め、2025年までに50万人の外国人就労者の増加を想定しています。(詳しくは『在留資格「特定技能とは」』をご参照下さい。)
日本で働く外国人へ門戸を開く反面、今まで以上に不法就労に関しては厳しく取り締まる方針をたてています。
どのような点が厳しくなったのかをわかりやすくご説明したいと思います。
入管法とは
外国人の日本での在留に関してのルールは「出入国管理及び難民認定法」という法律で規定されています。
「出入国管理及び難民認定法」は一般的には「入管法」と呼ばれています。
入管法では、全ての人の日本への入国・出国、外国人に関しての在留資格、在留期限、退去強制、難民に関しての認定、処遇について規定されています。
入管法の罰則
入管法では9章七十条から七十八条に罰則に関する規定が記されています。
入管法の罰則には、就労以外にも結婚や難民に関するさまざまなものがあります。
「町中に外国人がいるんだから、ちょっとぐらい時間オーバーで働かせても大丈夫でしょう」と軽く思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、入管法違反で逮捕者も出ているので、軽く考えることは禁物です。
平成29年1月1日から施行された改正入管法には「在留資格等不正取得罪」と「営利目的在留資格等不正取得助長罪」という2つの規定があります。
外国人就労に関しては、従来の「不法就労助長罪」の改正後の「在留資格等不正取得罪」と「営利目的在留資格等不正取得助長罪」3つの罪が非常に重要になります。
それでは3つの罪にして、それぞれどのような内容なのかをみてみましょう。
「不法就労助長罪」とは
「不法就労助長罪」とは「不法就労」を手助けする行為に関する犯罪です。
罰則は「三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」とされています。
「不法就労」とは
外国人が「不法就労」となるのは以下の3つのケースがあります。
不法滞在者や被退去強制者が働くケース
例えば、以下のようなケースが「不法滞在者や被退去強制者が働くケース」に該当します。
- 密入国した人や在留期限の切れた人が働く
- 退去強制されることが既に決まっている人が働く
入国管理局から働く許可を受けていないのに働くケース
例えば、以下のようなケースが「入国管理局から働く許可を受けていないのに働くケース」に該当します。
- 観光等短期滞在目的で入国した人が働く
- 留学生や難民認定申請中の人が許可を受けずに働く
入国管理局から認められた範囲を超えて働くケース
例えば、以下のようなケースが「入国管理局から認められた範囲を超えて働くケース」に該当します。
- 通訳やマーケティングなどの営業として在留資格を取得した人が掃除やウエイトレスなど単純労働者として働く
- 外国料理のコックや語学学校の先生として働くことを認められた人が工場・事業所で単純労働者として働く
- 留学生が許可された時間数を超えて働く
日本人の場合は営業職で採用した後に単純労働の部署に異動となることはありますが、営業職として在留資格を取得した人を単純労働者として働かせることは不法就労助長罪となる可能性がありますので、気をつけて下さい。
不法就労助長罪となるケース
上記のような不法就労外国人を雇った場合、不法就労助長罪となります。
外国人を雇用しようとする際に、その外国人が不法就労者であることを知らなかったとしても、在留カードを確認していない等の過失がある場合には処罰を免れません。
(不法就労を防ぐ対処法に関しましては『「不法就労」の外国人を雇わないための注意点』のページで詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)
入管法では不法就労助長罪に関して以下のように規定されています。
入管法 第七十三条の二
次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
二 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
三 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者
外国人に不法就労活動をさせた者
「外国人に不法就労活動をさせた者」とは、以下のような者が該当します。
(例)
- 不法就労者を雇用した者
- 不法就労者を使用した者
- 不法就労者を派遣して労務に従事させた者
外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
「外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者」とは、以下のような者が該当します。
(例)
- 不法就労者に宿舎を提供した者
- 不法就労者のパスポート等を預かった者
- 入国費用の負担等により事実上支配下に置いた者
外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者
「外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者」とは、以下のような者が該当します。
(例)
- ブローカー
- その他のあっせんをした者
- 仲介等をなした者
「在留資格等不正取得罪」とは
「在留資格等不正取得罪」とは、「偽りその他不正の手段」で在留資格の認定を受けたり更新を受ける行為に関する犯罪です。
「在留資格等不正取得罪」は入管法で以下のように規定されています。
入管法 第七十条
次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科する。
二の二 偽りその他不正の手段により、上陸の許可等を受けて本邦に上陸し、又は第四章第二節の規定による許可(在留資格の変更)を受けた者
「不正の手段」に関しては、以下のような判例があります。
「偽りその他不正の手段」とは、当該外国人が故意をもって行う虚偽の申し立て、不利益事実の秘匿、虚偽文書の提出等の不正行為の一切をいうと解するのが相当
東京地裁平成25年12月3日判決
以下に該当する場合は「偽りその他不正手段」となります。
- 故意であること
- 虚偽の申し立てをすること
- 自分にとって不利なことは隠しておくこと
- 虚偽文書を提出すること
「不法就労助長罪」の場合、外国人に不法就労をさせた事実、パスポートや在留カードを取り上げた事実、不法就労を斡旋した事実などの実証が必要です。
しかし、「在留資格等不正取得罪」は在留資格の取得時点の不正行為を理由に処罰できるという点が大きな違いです。
「営利目的在留資格等不正取得助長罪」とは
「営利目的在留資格等不正取得助長罪」とは、「営利目的」で不法入国や虚偽の申告などで在留資格の更新を「容易にした者」に対しての罰則です。
つまり、不正な行為で入国又は在留資格の更新をした外国人ではなく、金銭をもらうなどの営利目的で「偽りその他不正な手段で在留資格を取得又は更新しようとする外国人」の手助けをした者を処罰できるというものです。
入管法 第七十四条の六で以下のように規定されています。
入管法 第七十四条の六
営利の目的で第七十条第一項第一号若しくは第二号に規定する行為(以下「不法入国等」という。)又は同項第二号の二に規定する行為の実行を容易にした者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
例えば、実際にはハウスキーピングなどの単純労働をするにも関わらず、通訳としてフロント業務をするという申請書を作成するようなケースが該当します。
その他、お金をもらって偽装起業や偽装結婚などでの在留資格申請のための書類を作成することも営利目的在留資格等不正取得助長罪となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
不法就労の外国人を雇うことのリスクをご理解いただけたのではないかと思います。
不法就労の外国人を雇う以外にも、不法な手段で在留資格を取得することの手助けをしても罪になるので、絶対に不正行為に力を貸してはいけません。
今後、ますます外国人労働者が増えることが予想される中で、不法就労に対する取り締まりもますます厳しくなることと思います。
雇用者も労働者も必ず法令を遵守するようにしましょう。