「不法就労」の外国人を雇わないための注意点

外国人が日本に滞在して働くためには、出入国在留管理庁から働く許可をもらう必要があります。

近年、偽造した卒業証明書や虚偽の雇用証明書等を提出して在留資格を不正に取得する者(いわゆる偽装滞在者)や実習先から無断で立ち去り他の職に就く失踪技能実習生等の偽装滞在者の存在が問題となっています。

また、そういった偽装等の手口が悪質・巧妙化していることも問題になっています。

虚偽の内容で在留資格を申請したり、許可されていない仕事を行ったりすることは、いずれも入管法違反となります。

このうち、在留資格や資格外活動許可の範囲を超えて収入を伴う活動を行う行為が、法律上の「不法就労(不法就労活動)」に当たります。

虚偽申請そのものは「在留資格等不正取得」など別の犯罪となる場合もあり、不法就労とあわせて厳しく処罰される可能性があります。

知らずに不法就労者を雇ってしまうと、雇い主にも罰則があるので注意が必要です。

それでは、日本で働く事が出来る外国人の条件や不法就労者を雇わないための注意点、不法就労者を雇った場合の罰則などをわかりやすくご説明したいと思います。

(不法就労に関する法律は『不法就労助長罪とは?|厳罰化などわかりやすく解説します』で詳しくご説明していますので、ご参照下さい)

日本で働く事が出来る外国人とは

日本で働く事が出来る外国人とは

まず、大原則として「在留カード」を持っていない外国人(特別永住者を除く)は就労はできません。(在留カードに関しましては『在留カードとは』で詳しくご説明しています。)

「在留カード」を持っている外国人であっても、「日本で働く事が出来る在留資格」を持った外国人だけが、日本で働く事ができます。

在留カードをもっているからといって、自由に日本で働く事が出来るというわけではありません。

「日本で働く事が出来る在留資格」とはどのような資格なのでしょうか。

また、どんな在留資格であれば、どんな仕事ができるのでしょうか。

外国人を雇う前に必ず確認しなければいけない点をみてみましょう。

【ポイント1】在留カードの有効性の確認

在留カードの有効性の確認

外国人を雇う場合、まずは偽装された在留カード又は有効期限の切れた在留カードではないかといった確認が必要になります。

出入国在留管理庁のサイトで失効した在留カードの番号を確認するための情報を提供しています。

以下のページに在留カードの番号と有効期間を入力して確認しましょう。(※ 問合せ結果は在留カード等の有効性を証明するものではありません。)

在留カード等番号失効情報照会

実在する在留カード等の番号を悪用した偽造在留カード等も存在します。

以下のような在留カードの偽装を見破るポイントもご確認下さい。

在留カードの有効性の確認

【ポイント2】「就労制限の有無」の確認

在留カードの表面の真ん中あたりに水色の帯で「就労制限の有無」と書かれた欄があります。

この欄に書かれる記述にはいかのようなものがあります。

就労不可

この欄に「就労不可」と書かれている外国人は原則として働くことはできません。

ただし、裏面の下にある「資格外活動許可欄」に「許可」と書かれている場合、そこに書かれた条件の範囲では就労をすることができます。

最も一般的な資格外活動は留学生のアルバイトです。

「留学」という在留資格は就労不可ですので、原則として留学生はアルバイトをすることはできません。

しかし、資格外活動という許可をとることで週28時間以内の就労(風俗営業等を除く)をすることができるようになります。

「就労不可」と記載されている場合は、裏面の資格外活動欄も併せて確認しましょう。(資格外活動に関しましては『資格外活動とは』をご参照下さい)

在留カード(就労不可)

在留資格に基づく就労活動のみ可

外国人が日本で働く場合、どのような仕事をすることができるかを決められています。

その決められた仕事が「在留資格に基づく就労活動」です。

例えば、プログラマーとして企業に勤務する場合、「技術・人文知識・国際業務」という在留資格になります。

この人が独立して自分の会社を作ろうとした場合、「経営・管理」という在留資格に変更しなければいけません。

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で会社経営をおこなうことは出来ないのです。

外国人が専門的・技術的な分野などで働く場合は、次のような「就労系」の在留資格が必要です。

例:外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能、技能実習 など

これらの在留資格の多くでは、在留カードの「就労制限の有無」欄に「在留資格に基づく就労活動のみ可」と表示され、その在留資格ごとに認められた業務しか行うことができません。

指定書記載機関での在留資格に基づく就労活動のみ可

「指定書記載機関での在留資格に基づく就労活動のみ可」と書かれている在留カードを持っている外国人は「技能実習生」です。

技能実習生のアルバイトは認められていませんので、この記載のある在留カードを持っている外国人は実習生として受け入れる機関以外で働くことはできません。

指定書により指定された就労活動のみ可

「指定書により指定された就労活動のみ可」と書かれている在留カードを持っている外国人は「特定活動」という在留資格を持っている外国人です。

「特定活動」とは「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動」です。

法務大臣が個々に指定した活動等が記載された「指定書」というものがありますので、その指定書を確認します。

大学を卒業して日本で就職活動をする外国人やインターンシップ、ワーキングホリデーなどが該当します。

就労制限なし

「就労制限なし」と書かれている場合は、職業の種類や時間の制限なく、日本人と同じように就労することができます。

具体的には以下のような在留資格を持つ外国人です。

  • 永住者
  • 日本人の配偶者等
  • 永住者の配偶者等
  • 定住者

「不法就労」の外国人を雇った場合の罰則

それでは、働く許可をもっていない外国人を違法で雇った場合の罰則をみてみましょう。

不法就労者を雇用したり、不法就労をあっせんした事業主などは、入管法第73条の2に定める「不法就労助長罪」の対象になります。

(※以下は改正前条文の抜粋です)
〔改正前〕「三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」

出入国管理及び難民認定法(入管法)第七三条の二

次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
二 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
三 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者

その後の法改正により、現在は罰則が引き上げられており、「5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金(またはその両方)」が科される可能性があります(2025年施行の改正入管法)。

罰則が重くなっているため、在留カードの確認など不法就労防止の体制整備が以前にも増して重要になっています。

「外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置く」とは、宿舎を提供したり、パスポート等を預かったり、入国費用の負担等により事実上支配下に置く行為です。

雇うだけではなく、不法就労を斡旋した場合も不法就労助長罪となります。

また、以下のように「知らなかったことを理由に処罰を免れることができない」ともされていますので、必ず外国人の雇用の前には在留カードを確認しましょう。

2 前項各号に該当する行為をした者は、次の各号のいずれかに該当することを知らないことを理由として、同項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。
一 当該外国人の活動が当該外国人の在留資格に応じた活動に属しない収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動であること。
二 当該外国人が当該外国人の活動を行うに当たり第十九条第二項の許可を受けていないこと。
三 当該外国人が第七十条第一項第一号から第三号の二まで、第五号、第七号から第七号の三まで又は第八号の二から第八号の四までに掲げる者であること。

先程ご説明したように、留学生であっても「資格外活動」の許可があれば、週28時間以内のアルバイトはできます。

ただし、週28時間を超す就労はできませんので、留学生を週28時間以上働かせた場合は不法就労となりますので、ご注意下さい。

なお、大学等の長期休業期間中は、1日につき8時間以内まで就労が認められています(週28時間の上限ではなく、1日8時間の上限)。(参考:出入国在留管理庁ホームページ『「留学」の在留資格に係る資格外活動許可について』)

外国人を雇用した後の手続

外国人を雇用した場合、「ハローワークへの届出」と「入管庁への届出」の二つの仕組みがあります。

それぞれの目的と対象者が異なるため、混同しないことが重要です。

① ハローワークへの「外国人雇用状況の届出」(事業主の義務)

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(旧・雇用対策法)に基づき、すべての事業主は、外国人労働者(在留資格「外交」「公用」および特別永住者を除く)を雇い入れたとき・離職したときに、ハローワークへ「外国人雇用状況の届出」を行う義務があります。(参考:厚生労働省ホームページ『外国人雇用状況の届出について』をご参照下さい)

雇用保険の適用事業所で雇用保険に加入させる場合は、「雇用保険被保険者資格取得届・喪失届」に在留資格等を記入することで、この届出を兼ねることができます。

雇用保険に加入しないパート・アルバイト等の場合は、専用の「外国人雇用状況届出書」を提出します。

② 入管庁への届出

外国人本人および受入れ機関には、入管法に基づく次のような届出義務があります。(参考:外国人雇用に関するQ&A

  • 外国人本人による「所属機関等に関する届出」(転職・退職・所属機関の変更などがあった場合)
  • 一定の就労資格・研修・留学の中長期在留者を受け入れる機関による「中長期在留者の受入れに関する届出」

近年は、外国人雇用状況の届出情報と入管庁側の情報が連携される仕組みも整備されており、在留資格や在留期間に応じて、どの届出が必要かはケースごとに変わります。

実務上は、以下の2点が重要です。

  1. まずハローワークへの「外国人雇用状況の届出」を確実に行うこと
  2. そのうえで、対象となる在留資格かどうかを確認し、必要に応じて入管庁への届出を行うこと

まとめ

まとめ

いかがでしたでしょうか。

外国人が日本で働くためには、いろいろなルールがあることをご理解いただけたかと思います。

外国人を雇う場合、そのルールをきちんと理解して、その外国人の就労が違法ではないかを雇主側が確認する必要があります。

確認を怠って不法就労をさせていた場合は「不法就労助長罪」という罪になる場合がありますので、充分気をつけて下さい。

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