転職してきて数ヶ月後に雇った外国人から「在留期間の更新ができませんでした・・・」と言われたら、せっかく雇用したのにあなたの会社で働くことができなくなる可能性があります。
そういった更新の不許可リスクを軽減するために「就労資格証明書」というものがあります。
本記事では「就労資格証明書」とはどのようなものなのかを、わかりやすくご説明したいと思います。
(在留資格に関して詳しく知りたい方は『在留資格とは』で詳しくご説明しておりますので、ご参照下さい。)
どうして在留期間の更新ができないの?
在留資格は、在留資格の交付申請書の内容に書かれている業務で就労する資格があるかを判断して交付されます。
例えばA社で通訳として働くということで在留資格が認定された場合、同じ通訳という業務であってもB社でも在留資格が認められるとは限りません。
在留資格の認定は会社の規模や安定性なども判定の要件となりますので、現在の勤務先を退職して他の会社等へ転職する場合は注意が必要です。
転職先の会社の活動内容が現在与えられている在留資格の活動に該当しないと判断された場合には在留資格の更新が出来ない可能性があります。
就労資格証明書とは
転職した後に在留期間更新が不許可になってしまうと、最悪の場合は日本に在留することができなくなってしまいます。
そうなると雇った企業にとっても、日本で働きたい外国人にとっても大きなデメリットになります。
そのようなリスクを減らすために「就労資格証明書」があります。
就労資格証明書とは入国管理局のホームページでは以下のように説明されています。
就労資格証明書とは,我が国に在留する外国人からの申請に基づき,その者が行うことができる収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動(以下「就労活動」といいます。)を法務大臣が証明する文書です。
就労資格証明書(入管法第19条の2)
【メリット1】在留資格更新時の不許可を防ぐ
外国人が日本国内で合法的に就労できるか否かは在留カード等で確認することができます。(在留カードに関しましては『在留カードとは』をご参照下さい)
しかし、具体的にどのような活動が認められているかについては在留カードからは判断できません。
外国人を雇用等しようと思っても、先程ご説明したように、その外国人があなたの会社の業務で就労する資格が無かった場合、採用しても雇用できないということになってしまいます。
外国人本人も、転職後の更新で不許可になるリスクがあるので、事前に自分が転職先の業務で就労できるのかを確認しておきたいという気持ちがあります。
そこで、雇用主等と外国人の双方の利便を図るために、雇用しようとする外国人がどのような就労活動を行うことができるのか容易に確認できるようにするのが「就労資格証明書」です。
就労資格証明書の交付申請をすることで、雇用する前にあなたの会社の業務で就労する資格があるかを確認することができます。
ただし、外国人が日本国内で就労活動を行うことができるかを決定するのは「在留資格の種類又は資格外活動許可の有無」です。
就労資格証明書自体は外国人が就労活動を行うための許可書ではありませんので、就労資格証明書があるからといって必ず更新が出来るとは限りません。
また、就労資格証明書がなければ外国人が就労活動を行うことができないというものでもありません。
あくまで任意で事前確認をするための制度であることをご注意下さい。
【メリット2 不法就労者雇用の防止】
雇用主にとって不法就労者を雇用してしまうことは非常に大きなリスクです。
在留カードの確認などを怠った場合は、不法就労助長罪などの罪に問われる可能性もあります。(詳しくは『「不法就労」の外国人を雇わないための注意点』をご参照下さい。)
「就労資格証明書」は、雇用しようとする外国人が不法就労者ではないことを確認することもできます。
ただし、就労資格証明書を提示しないことによって雇用の差別等の不利益な扱いをしてはならない旨が入管法第19条の2第2項に規定されていますので、ご注意下さい。
出入国管理及び難民認定法(抄)
第19条の2 法務大臣は,本邦に在留する外国人から申請があつたときは,法務省令で定めるところにより,その者が行うことができる収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を証明する文書を交付することができる。
2 何人も,外国人を雇用する等に際し,その者が行うことができる収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動が明らかな場合に,当該外国人が前項の文書を提示し又は提出しないことを理由として,不利益な取扱いをしてはならない。
出入国管理及び難民認定法(抄)
在留期限が残っていない時期の転職は?
転職の場合の就労資格証明書の処理にかかる標準的な期間は1ヶ月から3ヶ月です。
もし在留資格が3ヶ月程度しか残っていない場合、就労資格証明書の交付申請をしても在留期間の更新に間に合わない可能性があります。
このように在留資格が半年未満くらいになった場合は、「転職有り」で在留期間更新許可申請をするのがよいと思います。
就労資格証明書の交付申請方法
就労資格証明書の交付申請方法は以下の通りです。
申請者
就労資格証明書は以下のいずれかに該当する人が申請をおこなうことができます。
1.申請人本人
2.申請の取次の承認を受けている次の者で,申請人から依頼を受けたもの
- 申請人が経営している機関又は雇用されている機関の職員
- 申請人が研修又は教育を受けている機関の職員
- 外国人が行う技能,技術又は知識を修得する活動の監理を行う団体の職員
- 外国人の円滑な受入れを図ることを目的とする公益法人の職員
3.地方入国管理局長に届け出た弁護士又は行政書士で,申請人から依頼を受けたもの
4.申請人本人の法定代理人
就労資格証明書交付申請の必要書類
就労資格証明書の交付申請には以下の書類が必要になります。
- 就労資格証明書交付申請書(新様式)【PDF】【EXCEL】
- 資格外活動許可書を提示(同許可書の交付を受けている者に限ります。)
- 在留カード又は特別永住者証明書
- 旅券又は在留資格証明書を提示
- 旅券又は在留資格証明書を提示することができないときは,その理由を記載した理由書
- 身分を証する文書等の提示(申請取次者が申請を提出する場合)
その他添付書類
上記以外にも以下の書類を添付します。
1.源泉徴収票(転職前の会社が発行したもの)
2.退職証明書
3.転職後の会社等の概要を明らかにする資料
- 商業・法人登記簿謄本(3ケ月以内に発行されたもの)
- 直近の決算書の写し(新設会社の場合は、今後1年間の事業計画書)
- 会社案内
4.転職後の活動の内容、期間、地位及び報酬の記載ある文書
- 雇用契約書の写し
- 辞令の写し
- 採用通知書の写し
5.その他、「本人の転職理由書」や「雇用理由書」などを添付する場合もあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
外国人が転職する場合、「就労資格証明書」は外国人本人にとっても、雇用主にとってもメリットのある制度だとご理解いただけたかと思います。
ただし、ご説明しましたように、就労資格証明書を提示しないことによって雇用の差別等の不利益な扱いをしてはならない旨が入管法第19条の2第2項に規定されていますので、ご注意下さい。