外国人が日本で働くためには、日本で就労することが認められている在留資格を取得する必要があります。
日本で働くことができる在留資格は「就労ビザ」とも呼ばれます。
就労ビザと言えば「経営・管理」「技術・人文知識・国際業務」といった在留資格が一般的です。
しかし、これだけでは多様化する外国人雇用の社会のニーズに対応できないため「特定活動」という在留資格があります。
新たな外国人材の活用に向けて「特定活動」という在留資格が注目されています。
「特定活動」という在留資格はどのようなものなのかをわかりやすくご説明したいと思います。
特定活動とは
外国人が日本で活動する活動内容は、年々多様化してきて、その全ての活動に対する在留資格を設定することはできません。
そこで、「経営・管理」「技術・人文知識・国際業務」や「日本人配偶者」「永住者」などには該当はしない「その他の活動」として設定されているのが「特定活動」です。
該当例としては、外交官等の家事使用人、インターンシップ、ワーキング・ホリデー、アマチュアスポーツ選手、経済連携協定に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者等さまざまな活動があります。
特定活動は「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動」と定義されています。
新たな在留資格を新設するには入管法を改正しなければいけませんが、特定活動で日本の在留を認める場合は法務大臣が決められるので、法改正は必要がありません。
「特定活動」の在留資格に該当する活動は出入国管理及び難民認定法(入管法)別表第一の五の表の下欄にイからニとして規定されています。
在留期間は5年、3年、1年、6月、3月又は法務大臣が個々に指定する期間(5年を超えない範囲)とされています。
つまり最長でも5年ということになります。
特定活動の種類
特定活動には「入管法に規定された特定活動」「告示特定活動」「告示外特定活動」があります。
それでは、「入管法規定の特定活動」「告示特定活動」「告示外特定活動」とは、それぞれどのようなものなのかを見てみましょう。
入管法に規定された特定活動
特定活動の中には法務大臣の告示ではなく、入管法の中で規定された活動があります。
特定研究等活動
特定研究活動とは以下のような活動です。
- 一定の要件を満たす本邦の公私の機関との契約に基づいて当該機関の施設において当該特定の分野に関する研究、研究の指導若しくは教育をする活動。(教育については、大学若しくはこれに準ずる機関又は高等専門学校においてするものに限る。)
- 当該活動と併せて当該特定の分野に関する研究、研究の指導若しくは教育と関連する事業を自ら経営する活動を希望する場合。
法務省のホームページ『在留資格「特定活動」(特定研究等活動)について』でも説明されていますので、ご興味のある方はご参照下さい。
特定情報処理活動
「特定情報処理活動」とは以下のような活動です。
- 法務大臣が指定する本邦の公私の機関との契約に基づいて当該機関の事業所において自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を要する情報処理に係る業務に従事する活動。
特定研究等家族滞在活動及び特定情報処理家族滞在活動
「特定研究等活動」又は「特定情報処理活動」を行う外国人の方の扶養を受ける配偶者又は子である場合には「特定研究等家族滞在活動及び特定情報処理家族滞在活動」となります。
告示特定活動
告示特定活動とは、入管法で規定された在留資格以外で法務大臣が告示として指定した活動です。
2018年6月13日の告示で43種類の活動が指定されています。
(全ての活動にご興味のある方は『平成三十年六月十三日法務省告示第百七十八号』をご参照下さい。
告示特定活動の具体的な活動内容に関しましては、後ほど詳しくご説明します。
告示外特定活動
既存の在留資格と告示で指定された特定活動だけでは該当しない活動もたくさんあります。
告示外特定活動とは、そのような在留資格や告示で指定された活動に該当しない活動で、法務大臣が上陸・在留を認める活動です。
具体的には、以下のようなケースが告示外活動となります。
- 就職先が決まらず卒業した留学生の就職活動期間
- 在留資格更新が不許可となった場合の出国準備期間
- 外国から呼び寄せた親
- 人道上配慮が必要な場合
「特定活動」として告示されている活動
先程ご説明しましたように、2018年6月13日の法務大臣の告示で「特定活動」として43種類の活動が指定されています。(平成三十年六月十三日法務省告示第百七十八号)
その中でも特に外国人を雇用する際に知っておくべき活動をご説明したいと思います。
ワーキングホリデー
法務大臣の告示ではワーキングホリデーとは、以下のような活動と定義されています。
日本国政府のオーストラリア政府、ニュージーランド政府、カナダ政府、ドイツ連邦共和国政府、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府、アイルランド政府、デンマーク王国政府、中華人民共和国香港特別行政区政府、ノルウェー王国政府、スロバキア共和国政府若しくはオーストリア共和国政府に対するワーキング・ホリデーに関する口上書、ワーキング・ホリデーに関する日本国政府と大韓民国政府、フランス共和国政府、ポーランド共和国政府、ハンガリー政府若しくはスペイン王国政府との間の協定又はワーキング・ホリデーに関する日本国政府とポルトガル共和国政府、アルゼンチン共和国政府若しくはチリ共和国政府との間の協力覚書の規定の適用を受ける者が、日本文化及び日本国における一般的な生活様式を理解するため本邦において一定期間の休暇を過ごす活動並びに当該活動を行うために必要な旅行資金を補うため必要な範囲内の報酬を受ける活動
ワーキングホリデーとは、「日本で一定期間の休暇を過ごし、その間の滞在費を補うために就労することを認める制度」です。
「活動を行うために必要な旅行資金を補うため必要な範囲内の報酬を受ける」就労は認められます。
日本文化及び日本国における一般的な生活様式を理解することを理由に許可されるものですので、風俗営業などに従事することはできません。
申請時の年齢が18歳以上30歳以下(韓国とアイルランドは25歳以下)であること、子供を同伴しないこと、滞在当初の生計を維持できる資金を所持することなどの条件があります。
インターンシップ
法務大臣の告示ではインターンシップとは、以下のような活動と定義されています。
外国の大学の学生(卒業又は修了をした者に対して学位の授与される教育課程に在籍する者(通信による教育を行う課程に在籍する者を除く。)に限る。)が、当該教育課程の一部として、当該大学と本邦の公私の機関との間の契約に基づき当該機関から報酬を受けて、一年を超えない期間で、かつ、通算して当該大学の修業年限の二分の一を超えない期間内当該機関の業務に従事する活動
インターンシップとは、簡単に言いますと「学生が職業経験を積むために企業で働く制度」です。
外国人学生がインターンシップとして日本の企業で就業体験をする場合、インターンシップ に参加することによって単位が取得できる必要があります。
インターンシップとして滞在できる期間は、一年を超えない期間で、かつ、通算して当該大学の修業年限の二分の一を超えない期間内とされています。
サマージョブ
法務大臣の告示ではサマージョブとは、以下のような活動と定義されています。
外国の大学の学生(卒業又は修了をした者に対して学位の授与される教育課程に在籍する者(通信による教育を行う課程に在籍する者を除く。)に限る。)が、その学業の遂行及び将来の就業に資するものとして、当該大学と本邦の公私の機関との間の契約に基づき当該機関から報酬を受けて、当該大学における当該者に対する授業が行われない期間で、かつ、三月を超えない期間内当該大学が指定した当該機関の業務に従事する活動
サマージョブとは、夏季休暇などを利用して日本の企業で働いて報酬を得る制度です。
サマージョブはインターンシップと似た制度ですが、最も大きな違いは「単位の取得が条件ではない」という点です。
また期間もインターンシップは最長1年ですが、サマージョブは最長3ヶ月となっています。
外国人建設就労者
外国人建設就労者とは、以下の法務大臣の告示から始まりました。
本邦の公私の機関が策定し、国土交通大臣が認定した適正監理計画(外国人建設就労者受入事業に関する告示(平成二十六年国土交通省告示第八百二十二号)にいう適正監理計画をいう。)に基づき、当該機関との雇用契約に基づいて建設業務に従事する。
外国人建設就労者受入事業とは、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会等の関連施設整備等による一時的な建設需要の増大に対応するため、緊急かつ時限的措置(2020年度で終了)として、国内人材の確保のために開始された制度です。
平成27年4月から本措置の対象となる外国人材の受入れが開始しました。
外国人造船就労者
法務大臣の告示では外国人造船就労者とは、以下のような活動と定義されています。
本邦の公私の機関が策定し、国土交通大臣が認定した適正監理計画(外国人造船就労者受入事業に関する告示(平成二十六年国土交通省告示第千百九十九号)にいう適正監理計画をいう。)又は企業単独型適正監理計画(同告示にいう企業単独型適正監理計画をいう。)に基づき、当該機関との雇用契約に基づいて造船業務に従事する活動
外国人造船就労者受入事業とは、高い国内生産率を維持して日本の輸出を支えている造船業が、急速に回復してきた生産機会を逃さないよう、緊急かつ時限的措置として、国内人材の確保のために開始された制度です。
平成27年4月から、本制度を活用した外国人材の受入れを開始しています。
製造業外国従事員
法務大臣の告示では製造業外国従業員とは、以下のような活動と定義されています。
本邦の公私の機関が策定し、経済産業大臣が認定した製造特定活動計画(製造業外国従業員受入事業に関する告示(平成二十八年経済産業省告示第四十一号)にいう製造特定活動計画をいう。)に基づき、当該機関の外国にある事業所の職員が、当該機関が当該国に設ける生産施設において中心的な役割を果たすための技術及び知識を身に付けるため、当該機関の本邦における生産拠点において製造業務に従事する活動
製造業外国従業員受入事業は、以下のような目的の制度です。
- 国内生産拠点と海外生産拠点の役割分担を図り、日本の製造業の国際競争力を強化する。
- 国内製造業の空洞化を押しとどめる。
- 日本国内にある事業所を人材育成や技能継承等の機能を有する国内生産拠点として研究開発や設備投資を強化する。
- 日本生産拠点で確立された生産技術等を当該事業者の外国にある事業所に普及させる。
就労できない「特定活動」
特定活動の在留資格を持っている外国人すべてが就労できるわけではありません。
特定活動の在留資格を取得する場合、同時に指定書という書類がパスポートに貼付されます。
この指定書に就労が出来る旨が記載されていない場合は就労はできません。
例えば、留学生のアルバイトを雇っていたとします。
その留学生が大学を卒業して日本で就職活動をする場合、「留学」という在留資格から「特定活動」変更しなければいけません。
留学生は原則としては就労は認められていませんが、「資格外活動」という許可をとることで週28時間までの就労が出来るようになります。(詳しくは『資格外活動とは|アルバイトを雇う時の注意点』をご参照下さい。)
学生時代にアルバイトをしていた場合は、留学の在留資格に資格外活動の許可をとる必要があります。
卒業後の就職活動のため「留学」から「特定活動」に変更した場合、就職活動での特定活動では就労は出来ませんので、特定活動に変更した後に改めて「資格外活動」の許可が必要になります。
継続就職活動の特定活動の在留資格で資格外活動の許可無しでアルバイトをした場合、不法就労となります。
就労不可の外国人を雇用した場合、不法就労助長罪のような罪に問われる可能性がありますので充分に注意をして下さい。
(詳しくは『知らなかったではすまない!不法就労助長罪とは』でご説明していますので、ご参照下さい。)
「指定書」とは
特定活動の活動内容は非常に多岐に渡っています。
滞在理由や期間も人によって大きく変わるため、第三者にとっては、単に「特定活動」という在留資格を見てもどのような内容の活動で在留が許可されているのかがわかりません。
そこで「指定書」というものに特定活動の活動内容の詳細を記載するようになっています。
指定書は基本的にパスポートに添付されます。
先程例にあげました継続就職活動で特定活動を取得した場合の指定書はどのようになっているのでしょうか。
継続就職活動での特定活動の指定書には「就職活動及び当該活動に伴う日常的な活動(収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を除く。)」と記載されます。
つまり原則として就労は出来ません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
特定活動には個々のたくさんの活動があるので、理解し難いと思われていた方も多いのではないでしょうか。
今後、日本に在留する外国人が多様化していく中で、既存の在留資格のカテゴリには入らない活動もたくさん出てくる可能性があると思います。
そういった中で、「特定活動」という在留資格はますます重要になってくると思います。