近年、留学生の在留管理やアルバイトに関する審査が厳しくなりつつあります。
「留学ビザの厳格化」という言葉を耳にして、これから留学を予定される方や、すでに在留中でビザの更新・卒業後の就職を控える方の中には、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、在留資格『留学』(以下、留学ビザ)をめぐる厳格化の動きを、①取得段階(在留資格認定証明書)、②在留中のアルバイト、③在留期間の更新、④卒業後の就労ビザへの変更という4つの段階に分けて解説します。2026年4月以降に動き出した運用見直しも反映しています。
留学生を雇用される企業のご担当者様にも役立つ内容です。
なお、入管法令は頻繁に改正されるため、最新の情報は必ず出入国在留管理庁(以下、入管庁)の公式サイト等でご確認ください。
在留資格『留学』とは
在留資格『留学』は、日本の大学・短期大学・専門学校・日本語教育機関などで教育を受ける外国人に与えられる在留資格です。
原則として就労はできず、アルバイトをするには資格外活動許可が必要です。
留学ビザの対象となるのは、大学・大学院・短期大学・高等専門学校・専門学校(専修学校専門課程)・各種学校、そして日本語教育機関などで学ぶ方です。
在留期間は学業の状況に応じて、4年3月を超えない範囲で指定され、進学や進級に合わせて更新していくことになります。
在留資格『留学』は、あくまで「学ぶこと」を目的とした在留資格です。そのため、就労は原則として認められていません。
アルバイトをする場合には、別途「資格外活動許可」を受ける必要があります。
在留資格全体の枠組みについては、在留資格とはもあわせてご覧ください。
なぜ今「留学ビザの厳格化」が進むのか
留学ビザの厳格化が進む背景には、留学生数の増加と、「留学」を悪用した不法就労への対策があります。
まずは、厳格化が議論される理由を整理します。
外国人留学生は、新型コロナウイルスの影響で一時的に減少した時期もありましたが、近年は再び大きく増加しています。
出入国在留管理庁の公表資料によると、在留資格『留学』で在留する方は、2025年6月末時点で約43万5,000人、2025年末時点では約46万5,000人(464,784人)へと増えています。
在留外国人数全体も2025年末に412万5,395人となり、初めて400万人を超えました(出典:出入国在留管理庁「2025年末現在における在留外国人数について」)。
留学生は日本社会にとって貴重な存在である一方、その在留管理のあり方が改めて問われています。
問題視されているのは、本来は学ぶための「留学」を、実質的に就労を目的として利用するケースが一部に存在することです。
規定の労働時間を超えて働いたり、学校にほとんど通わずにアルバイトに従事したりする事例が、長年指摘されてきました。
こうした「抜け穴」を防ぐため、政府は留学生の在留管理と就労審査を見直す方針を示しています。
重要なのは、すでに省令・告示や運用として動き出したものと、今後の改正方針として報じられているものを区別して理解することです。
本記事でも、両者を可能な限り分けて説明します。
①取得段階(在留資格認定証明書)の厳格化
来日前の段階では、「在留資格認定証明書(COE)」の交付審査が、より丁寧に行われる傾向があります。
経費支弁能力・日本語能力・受入れ機関の在籍管理が、主なポイントです。
海外から留学する場合、まず日本の入管庁に在留資格認定証明書(COE。在留資格に該当することを入国前に証明する書類)の交付を申請します。
このCOEの審査が、近年、厳格化の対象となっています。
経費支弁能力の確認強化
留学中の学費・生活費をまかなえることを示す「経費支弁能力」の確認が、より丁寧に求められる傾向があります。
経費支弁能力とは、留学中に必要となる学費や生活費を支払う資力があることをいいます。
申請の際には、経費支弁者(本人または保護者など)について、次のような資料の提出を求められることがあります。
資金の出どころが不自然でないか、継続的に支弁できるか、といった点が確認されます。
| 確認される主な観点 | 提出を求められることがある資料の例 |
|---|---|
| 学費・生活費を支払う資力 | 経費支弁者の預金残高証明書 |
| 収入の安定性 | 収入証明書・課税証明書等 |
| 資金形成の経緯 | 資金の形成過程を示す資料 |
| 本人との関係 | 経費支弁者との関係を証する文書 |
※具体的な必要書類は、国籍・地域や受入れ機関により異なります。
最新の必要書類は、入管庁の公式情報および入学先の案内でご確認ください。
日本語能力の確認の厳格化(2026年運用見直し)
日本語教育機関へ入学する場合には、日本語能力の確認が段階的に厳格化されています。
入管庁は、日本語教育機関に入学する方に係る運用の一部見直しを公表し、入学時の日本語能力の確認を厳格化する方針を示しています。
適用時期は手続きの種類により異なり、在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請については2026年7月1日から、新規の在留資格認定証明書(COE)交付申請については令和8年(2026年)10月期生から適用されるとされています。
なお、外国の大学等を卒業した方については、これまでどおり日本語能力の立証を不要とする特例が維持されます。
求められる確認の具体的な内容や書類は手続きごとに異なります。
最新の取扱いは、入管庁の公開情報や入学を希望する教育機関の案内で必ずご確認ください。
受入れ機関(日本語教育機関)の在籍管理
留学生本人だけでなく、受入れ機関の管理状況も審査に影響します。
日本語教育機関には、告示基準や運営ガイドラインにより、学生の出席状況や資格外活動の把握といった在籍管理が求められています。
後述のとおり、2026年4月以降は、資格外活動の状況を定期的に把握・指導する運用が具体化されました。
こうした在籍管理が適切に行われていない機関は、適正な学校として扱われなくなる可能性があり、そこに所属する留学生の在留審査にも間接的に影響します。
②在留中のアルバイト(資格外活動許可)の厳格化
在留中の留学生にとって、最も影響が大きいのがアルバイト(資格外活動)に関する厳格化です。
28時間ルールの徹底に加え、2026年4月からは資格外活動状況の把握が強化されています。
資格外活動許可の基本(28時間ルール)
まず、留学生のアルバイトに関する現在のルールを確認します。
留学ビザで働くことは原則として認められていませんが、資格外活動許可(留学生などが本来の活動以外で働くための許可)を受けることで、例外的にアルバイトが可能になります。
許可を受けた場合でも、就労できるのは原則として1週について28時間以内です。
長期休業期間(夏休みなど)については、1日8時間以内まで認められます。
この時間制限を超えて働くと、不法就労に該当するおそれがあります。
資格外活動許可と28時間ルールの詳細は、資格外活動とは(留学生アルバイトの注意点)で詳しく解説しています。
あわせて、留学生の資格外活動許可・28時間ルールもご参照ください。
資格外活動状況の把握強化(2026年4月から運用開始)
2026年4月から、日本語教育機関を通じた資格外活動状況の把握が具体化されました。ここはすでに運用が始まっている施行済みの動きです。
入管庁は、日本語教育機関に対し、在籍する留学生の資格外活動の遵守状況を適正に管理する体制の整備を求めています。
具体的には、3か月に1度、在籍する留学生から、①資格外活動許可の有無、②資格外活動を行う勤務先の名称(複数ある場合はそのすべて)、③資格外活動の具体的な内容、④毎日の資格外活動の時間を確認し、許可の内容に違反する状況があれば指導・改善させる運用です。
留学生本人にとっては、勤務先や就労時間を定期的に申告し、28時間ルールを守ることが、これまで以上に重要になります。
「一律許可」から「個別審査」への見直し(検討段階)
資格外活動許可のあり方そのものの見直しも議論されていますが、こちらは確定した制度ではなく、報道・検討段階である点に注意が必要です。
これまで、留学生の資格外活動許可は、入国時などに申請すれば原則として許可される運用が一般的でした。
2025年12月の報道では、政府がこの仕組みを見直し、出席状況や学業の進行状況などを踏まえた個別の審査へ移行することを検討していると伝えられています。
あわせて、複数の勤務先での合計労働時間を把握する仕組みの整備も議論されているとされます。
ただし、これらは現時点で報道・検討段階の内容を含むため、確定した制度として運用されているわけではありません。
最終的な制度の内容は、入管庁の公式発表でご確認ください。弊事務所でも、今後の省令・告示の公布状況を注視しています。
雇用する企業側の確認責任
留学生を雇用する企業にとっても、確認責任は重くなっています。
留学生をアルバイトとして雇用する企業は、その留学生が資格外活動許可を受けているか、就労時間が制限内に収まっているかを確認する必要があります。
これを怠ると、企業側が不法就労助長罪に問われるおそれもあります。
外国人を雇用する際の確認事項については、不法就労の外国人を雇わないための注意点もあわせてご確認ください。
③在留期間更新の厳格化
在留中の留学生がつまずきやすいのが、在留期間更新の審査です。出席率や成績、アルバイトの状況が確認され、これらに問題があると更新が認められないことがあります。
留学ビザの在留期間更新では、学業を適切に続けているかが審査されます。
特に、出席率の低下や成績不良は、更新が不許可となる要因になり得ます。
出席率については、日本語教育機関の告示基準上、1か月の出席率が8割を下回った留学生に対して、8割以上になるまで改善指導を行い、その指導状況を記録・保存することが求められています。
これはあくまで機関側の管理基準ですが、出席率がこれを下回る状態が続くと、在留期間更新の審査でも不利に扱われる可能性があります。
入管庁は、出席率や成績が悪い背景に、アルバイトのしすぎがあるのではないかと見ることがあります。
学業に支障が出るほど働いている場合、資格外活動の範囲を超えた就労が疑われ、更新審査で不利に扱われる可能性があります。
出席率や成績に不安がある場合は、その理由を理由書などで丁寧に説明することが望まれます。
なお、やむを得ない事情で進路が変わった場合などに、留学から別の在留資格へ切り替えることで在留を継続できたケースもあります。
例えば、「留学」から「特定活動」へ変更した事例が参考になります。
※個別事案により判断は異なります。
④卒業後の就労ビザへの変更の動向
卒業後に日本で就職する場合、留学ビザから就労ビザへの変更が必要です。
この変更をめぐっては、手続き面の「一部緩和」と、審査書類の「一部厳格化」が併存しています。
両者を正しく理解することが大切です。
留学生が日本の企業に就職する場合、在留資格を『留学』から『技術・人文知識・国際業務』(技人国)などの就労資格へ変更する手続き(在留資格変更許可申請)が必要です。
まず緩和の側面です。
2025年12月1日から、一定の要件を満たす方(本邦の大学・大学院・短期大学の卒業予定者など)については、『留学』から『技術・人文知識・国際業務』または『研究』への変更申請で、提出書類の一部を省略できるようになりました。
ただし、提出書類が減ることで限られた書類で適性を判断されるため、一つひとつの書類の正確さはこれまで以上に重要です。
なお、派遣形態での雇用は、この書類省略の対象外です。
一方で厳格化の側面もあります。
入管庁は、技人国の案内ページを2026年4月15日付で更新し、同日以降の認定・変更・更新の申請について、所属機関がカテゴリー3またはカテゴリー4に該当する場合、「所属機関の代表者に関する申告書」の提出を求めることとしました。
さらに、主に言語能力を用いて対人業務(営業・通訳・接客など)に従事する場合には、その業務で使用する言語についてCEFR・B2相当(日本語であればJLPT・N2以上など)の言語能力を証する資料が必要とされています。
これは法律・省令による一律の要件ではなく、入管庁の運用上の案内であり、対象も限定されますが、留学生が技人国へ変更して対人業務に就く場合には影響し得る点に注意が必要です。
審査では、専攻した内容と就職先での職務内容に関連性があるか、単純労働に該当しないか、といった本質的な部分が引き続き厳しく確認されます。
技人国ビザの要件については、技術・人文知識・国際業務ビザとはで詳しく解説しています。
申請時期にも注意が必要です。
4月入社に向けた変更申請は1〜3月に集中するため、入管庁は、例年、4月からの就労開始を希望する場合、前年12月1日から1月末までの間に申請することを推奨しています。
早めの準備が大切です。
仮に一度不許可となっても、内容を見直して再申請し、許可された例もあります。
3回の不許可を経て認定が出た事例が参考になります。
※個別事案により判断は異なります。
留学生・雇用企業が今からできる準備
厳格化の流れの中でも、留学生本人と雇用企業がそれぞれ取り組めることがあります。
早めの準備が、トラブルを避ける最大のポイントです。
留学生本人ができること
学業を優先し、在留資格の前提を満たし続けることが基本です。
- 出席率を維持し、学業を優先する(更新審査で重視されます)
- 資格外活動許可の範囲(原則週28時間以内)を守り、勤務先や就労時間を正確に申告する
- COEや更新・変更申請の書類を、余裕をもって早めに準備する
雇用する企業ができること
採用予定の留学生がスムーズに就労資格へ移行できるよう、早期の準備が求められます。
- 採用内定の段階で在留資格変更の見通しを立てる(自社のカテゴリーが3・4に該当するかも確認)
- 入社日から逆算して申請スケジュールを組む(4月入社は1月末までの申請が一つの目安)
- 採用前に、留学生のこれまでのアルバイト状況を確認する
よくあるご質問(FAQ)
留学ビザの厳格化について、よく寄せられるご質問にお答えします。
Q1: 留学ビザは今から取りにくくなっていますか?
経費支弁能力の確認、日本語能力の確認の厳格化、受入れ機関の在籍管理など、審査が丁寧になる傾向はあります。
ただし、留学ビザは適切に準備すれば取得できる在留資格です。
要件を正確に把握し、書類を整えることが大切です。
Q2: アルバイトの「週28時間ルール」は変わりますか?
現在の上限は、原則として週28時間以内です。
2026年4月からは、日本語教育機関を通じて勤務先や就労時間を定期的に確認する運用が始まっています。
許可のあり方を個別審査へ見直す動きも報じられていますが、こちらは検討・報道段階です。確定した制度改正の内容は、入管庁の公式発表でご確認ください。
Q3: 出席率が悪いと在留期間の更新はできませんか?
出席率や成績が著しく悪い場合、更新が認められないことがあります。
病気などやむを得ない事情がある場合は、その理由を理由書などで丁寧に説明することが望まれます。
※個別事案により判断は異なります。
まとめ
留学ビザの厳格化は、①取得(在留資格認定証明書)、②在留中のアルバイト(資格外活動)、③在留期間の更新、④卒業後の就労ビザへの変更という各段階で進んでいます。
重要なのは、すでに施行・運用が始まった動きと、報道・検討段階の動きを区別して理解することです。
経費支弁能力や日本語能力の確認、2026年4月からの資格外活動状況の把握、技人国の追加書類などは、すでに実務が動いています。
一方、卒業後の就労変更では書類省略という緩和も併存し、資格外活動許可の個別審査化などは今後の動向を注視する必要があります。
いずれの段階でも、早めに正確な情報を把握し、準備を進めることがトラブルの回避につながります。
個別の事案については、専門家へのご相談をおすすめします。
さむらい行政書士法人では在留資格申請のサポートを行っています。
※本記事は2026年6月時点の入管法令・公開情報をもとに作成しています。法令改正や運用見直し等により内容が変更される可能性があるため、最新の情報は出入国在留管理庁の公式サイト等でご確認ください。個別の事案については弁護士・行政書士等の専門家へのご相談を推奨します。

