
はじめに
技能実習制度が発展的に解消され、新たに「育成就労制度」が始まります。
施行日は2027年(令和9年)4月1日です。
技能実習生を受け入れている企業のご担当者様にとっては、制度が変わることで自社の受入れがどうなるのか、いつまでに何を準備すべきかが気になるところではないでしょうか。
この記事では、育成就労制度について、制度の全体像・技能実習制度との違い・対象分野・転籍のルール・受入れ企業の準備という5つの観点から解説します。
あわせて、2026年7月時点で確定している事項と、まだ確定していない事項も区別してご説明します。
本記事に関して
※本記事は2026年7月時点の入管法令・公開情報をもとに作成しています。法令改正等により内容が変更される可能性があるため、最新の情報は出入国在留管理庁の公式サイト等でご確認ください。個別の事案については弁護士・行政書士等の専門家へのご相談を推奨します。
育成就労制度とは

育成就労制度とは、人手不足の分野において、日本での3年間の就労を通じて特定技能1号の水準の技能を持つ人材を育成し、確保する制度です。
この制度に基づいて活動する外国人の在留資格の名称も「育成就労」となります。まずは制度の目的と根拠となる法令を確認します。
制度の目的は「人材育成」と「人材確保」
育成就労制度の目的は、人材育成と人材確保の2つです。
出入国在留管理庁(以下、入管庁)は、育成就労制度と特定技能制度に連続性を持たせることで、外国人が日本で就労しながらキャリアアップできる仕組みを構築し、長期にわたり日本の産業を支える人材を確保することを目的として説明しています。
技能実習制度が「技能移転による国際貢献」を目的としていたのに対し、育成就労制度は日本国内の人手不足への対応を正面から目的に据えている点が、制度の性格を大きく分けています。
なお、育成就労制度では分野ごとに受入れ見込数が設定され、これが受入れの上限数として運用されます。
令和10年度末までの受入れ見込数は、特定技能外国人が80万5,700人、育成就労外国人が42万6,200人で、合計約123万人です。
これは現在の在留者数に上乗せして受け入れる数ではなく、在留者数の総計としての見込数とされています。
(出典:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」)
在留資格の全体像については、在留資格とはの記事もあわせてご覧ください。
根拠法と施行日
育成就労制度の根拠となるのは、2024年(令和6年)6月14日に成立し、同月21日に公布された「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」(令和6年法律第60号)です。
この法律により、出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)が改正されるとともに、従来の技能実習法は「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」(育成就労法)へと名称も含めて抜本的に改められます。
施行日は、施行期日を定める政令により2027年(令和9年)4月1日と定められています。実際に育成就労外国人を受け入れられるようになるのも、この日からです。
(出典:令和7年政令第340号、出入国在留管理庁「育成就労制度の制度概要・関係法令」)
なお、同時期に公布された令和6年法律第59号は、マイナンバーカードと在留カードの一体化(特定在留カード)に関する別の改正法です。
両者は内容も施行時期も異なりますので、混同しないようご注意ください。
(※特定在留カードに関しましては『特定在留カードとは|2026年6月開始のマイナンバー一体型を解説』のページで詳しくご説明していますので、ご参照ください。)
2026年7月時点で確定していること・していないこと
育成就労制度は、法律の公布から施行までに3年近い準備期間が置かれており、詳細は段階的に固まってきました。
2026年7月時点の状況は次のとおりです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 確定済み | 施行日(2027年4月1日)/ 育成就労産業分野17分野と業務区分 / 主務省令 / 育成就労制度運用要領 / 受入れ人数枠の表 / 転籍制限期間の枠組み / 指定区域 / 施行日前申請の受付時期 / 分野別の上乗せ基準告示 |
| 一部確定 | 二国間取決め(協力覚書):タイ・ウズベキスタンとは締結済み。今後の締結国の全体像は未確定 |
| 未確定 | 転籍先が転籍元へ支払う金額を定める告示 / 優良な育成就労実施者・監理支援機関の具体的な基準 |
情報を参照される際は、公表日をあわせてご確認ください。
育成就労制度と技能実習制度の違い

育成就労制度は「技能実習制度の名称変更」ではありません。
目的・在留期間・転籍の可否など、実務に直結する部分が広く変わります。
ここでは主な相違点を整理したうえで、特に影響の大きい変更点を取り上げます。
比較表で見る主な違い
技能実習制度と育成就労制度の主な違いは、次のとおりです。
| 項目 | 技能実習制度(現行) | 育成就労制度(2027年4月1日〜) |
|---|---|---|
| 目的 | 技能移転による国際貢献 | 人材育成と人材確保 |
| 在留資格 | 技能実習 | 育成就労 |
| 在留期間 | 1号・2号・3号で通算最長5年 | 原則3年 |
| 号数の区分 | 1号から3号までの区分あり | 区分なし |
| 計画の認定 | 各号の段階ごとに認定 | 当初から3年分の計画を一括で認定 |
| 転籍 | 原則不可(やむを得ない事情がある場合を除く) | 一定の要件の下で本人の意向による転籍が可能 |
| 対象分野 | 移行対象職種・作業として細分化 | 育成就労産業分野17分野 |
| 必須業務の割合 | 全体の2分の1以上 | 全体の3分の1以上(関連業務・周辺業務の区分は廃止) |
| 監理を行う団体 | 監理団体 | 監理支援機関(許可基準を厳格化) |
| 民間の職業紹介事業者 | 関与可能 | 本人意向の転籍では関与を認めない |
※技能実習の移行対象職種・作業は追加により随時変動します。最新の一覧は外国人技能実習機構(OTIT)が公表しています。
最大の変更点は「本人意向による転籍」
技能実習制度では、やむを得ない事情がある場合を除き、実習先を変更することは認められていませんでした。
育成就労制度では、従来どおり暴力やパワーハラスメントなどの人権侵害を受けた場合等の転籍を認めることに加え、新たに一定の要件の下で本人の意向による転籍も認められます。
外国人を労働者としてより適切に権利保護するという観点からの見直しです。
受入れ企業にとっては、人材の定着に向けた職場環境づくりが、これまで以上に重要になると考えられます。
受入れ形態は「単独型」と「監理型」の2つ
育成就労制度でも、技能実習制度の企業単独型・団体監理型に対応する形で、2つの受入れ形態が設けられます。
この区分は、後述する受入れ人数枠にも関わる重要な前提です。
| 形態 | 内容 |
|---|---|
| 単独型育成就労 | 外国の支店や子会社の社員等を受け入れる形態。監理支援機関の監理支援を受けない |
| 監理型育成就労 | 監理支援機関が関与する形態 |
技能実習制度では、外国の取引先企業の社員等も企業単独型で受け入れることが可能でしたが、育成就労制度では単独型での受入れは認められず、監理型となります。
また、単独型には新たに監査が義務付けられます。
過去3年以内に養成講習を修了し、育成就労外国人を監督する立場にないなど中立に監査を実施できる立場にある者が、3か月に1回以上の頻度で実地確認による監査を行う必要があります。
なお、外国の支店や子会社の社員等を研修等のために比較的短期間受け入れていた場合については、新たに創設される在留資格「企業内転勤2号」による受入れが想定されています。
企業内転勤2号は育成就労計画の認定申請が不要で、育成就労産業分野以外の業務にも従事できますが、受入れ機関の常勤職員数が20人以上であること、受け入れる人数が常勤職員数の5%までであること、転勤元で1年以上勤務していること、在留できる期間が通算1年までであることなどの要件があります。
監理団体は「監理支援機関」へ
技能実習制度の監理団体は、育成就労制度では「監理支援機関」となります。
名称が変わるだけでなく、許可の基準そのものが厳格化されます。
重要な点として、現在の監理団体がそのまま監理支援機関になれるわけではありません。
育成就労制度に関わる業務を行うには、改めて監理支援機関としての許可を受ける必要があります。
また、これまでの外国人技能実習機構は「外国人育成就労機構」へ改組されます。
育成就労計画の認定に加え、育成就労外国人の転籍支援や、1号特定技能外国人に対する相談援助業務も担うこととされています。
育成就労と特定技能の関係

育成就労制度は、特定技能制度への移行を前提として設計されています。
この2つの制度の接続関係を理解しておくことが、育成就労制度を正しく捉えるうえでの鍵となります。
3年間で特定技能1号の水準を目指す
特定技能制度が「即戦力となる人材」の受入れを想定しているのに対し、育成就労制度で受け入れる外国人には、入国時点でそのような専門性や技能は求められません。
つまり、育成就労の3年間で特定技能1号の水準まで育成し、その後は特定技能1号として就労を続けてもらうというキャリアパスが制度上想定されています。
特定技能1号は原則5年を上限とする在留が可能で、特定技能2号には在留期間の上限がありません。
在留資格「特定技能」の詳細については、在留資格「特定技能」とはで解説しています。
特定技能1号への移行要件
育成就労から特定技能1号へ移行するためには、技能と日本語能力の両面で試験に合格する必要があります。
| 区分 | 求められる要件 |
|---|---|
| 技能 | 技能検定試験3級等または特定技能1号評価試験の合格 |
| 日本語能力 | 日本語能力A2相当以上の試験(日本語能力試験N4等)の合格 |
現行の特定技能制度では、技能実習2号を良好に修了した方はこれらの試験が免除されていますが、育成就労制度では試験の合格が移行の要件となります。
3年を経過した時点で試験に不合格となった場合については、最長1年の範囲内で一定の在留継続が認められる可能性があるとされています。
ただし、これは試験に不合格であれば自動的に1年間延長されるという趣旨ではありません。
認められる場合の具体的な要件や手続は、入管庁の資料でご確認ください。
また、3年の満了を待たずに移行できる場合もあります。
技能・日本語能力の試験に合格していることに加え、現に在籍している受入れ企業での就労期間が一定の期間を超えている場合に限り、育成就労の途中でも特定技能1号への移行を認める方針とされています。
(出典:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」)
対象となる17分野と業務区分

育成就労制度で受け入れができるのは、「育成就労産業分野」として定められた分野に限られます。
分野と業務区分は、2026年(令和8年)1月23日に閣議決定された分野別運用方針で定められました。
育成就労産業分野の一覧
育成就労産業分野は、次の17分野です。
| 分野 |
|---|
| 介護 / ビルクリーニング / 工業製品製造業 / 建設 / 造船・舶用工業 |
| 自動車整備 / 宿泊 / 農業 / 漁業 / 飲食料品製造業 / 外食業 |
| 鉄道 / 林業 / 木材産業 / リネンサプライ / 物流倉庫 / 資源循環 |
このうちリネンサプライ・物流倉庫・資源循環の3分野は、2026年1月の閣議決定で新たに追加された分野です。
試験等の整備が整い次第、受入れが開始される予定とされています。
(出典:出入国在留管理庁「特定産業分野・育成就労産業分野及び業務区分一覧」)
特定技能19分野との違い
特定技能の対象である特定産業分野は19分野ですが、育成就労産業分野は17分野です。
自動車運送業分野と航空分野は特定産業分野のみが対象で、育成就労では受け入れられません。
また、技能実習2号の移行対象職種であっても、育成就労産業分野の対象とならない職種があります。
分野別運用方針では、クリーニング職種(一般家庭用クリーニング作業)、空港グランドハンドリング職種、ボイラーメンテナンス職種(ボイラーメンテナンス作業)が対象外とされました。
なお、分野によっては、共通のルールに加えて「上乗せ基準告示」が定められています。
介護・建設・農業などの告示が2026年4月以降に順次公表されていますので、自社の分野の告示は入管庁の公式サイトでご確認ください。
業務区分の該当性はどのように判断されるか
分野名が自社の事業に近いというだけでは、受入れの可否は判断できません。
実際に従事させる業務が、公表されている業務区分に該当している必要があります。
判断の中心となるのが「主たる技能」という考え方です。
育成就労では、修得させる主たる技能をあらかじめ定めたうえで、その技能を修得するために必要な「必須業務」に、全体の就労時間の3分の1以上従事させることが求められます。
これに加えて、それぞれの業務区分の範囲内で、必須業務と関連する業務に従事させることが可能です。
あわせて、従事させる業務に関する安全衛生に係る業務に、全体の就労時間の10分の1以上従事させることも必要です。
必須業務の割合とセットで、就労時間の配分を設計する必要があります。
したがって、繁忙期だけ該当業務に従事し、それ以外は別の作業に充てるといった運用では、要件を満たさない可能性があります。
また、人材育成の一貫性を確保する観点から、「夏は農業、冬は漁業」のように分野をまたいで働くことはできません。
(出典:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」、同「育成就労制度の制度概要・関係法令」)
育成就労で働く外国人に求められる要件

ここでは、育成就労外国人となる方の側に着目し、在留期間・日本語能力・家族の帯同といった生活面に関わる要件を確認します。
在留期間は原則3年
育成就労の期間は、原則3年です。
技能実習制度のような1号から3号への段階的な移行はなく、当初から3年間の育成就労計画を作成して認定を受ける形になります。
3年を経過した時点で特定技能1号への移行に必要な試験に不合格となった場合には、前述のとおり、最長1年の範囲内で一定の在留継続が認められる可能性があります。
なお、季節性のある業務を含む分野(農業分野・漁業分野)については、派遣元と派遣先が共同で育成就労計画を作成し認定を受けることで、派遣の形態による育成就労も可能です。
これらの分野では、毎年の閑散期に一時帰国して育成就労を休止する計画も認められます。
この場合、一時帰国の時期は毎年同じである必要があり、一時帰国の期間は最大6か月です。
帰国期間は育成就労の期間に含まれないため、日本で就労する期間の合計が3年になるよう計画を作成します。
一時帰国に要する旅費は、単独型育成就労では受入れ企業が、監理型育成就労では監理支援機関が負担します。
日本語能力の要件
育成就労制度では、入国の時点で日本語能力に関する要件は課されていません。日本語の要件は、就労開始前・1年以内・3年間の目標という3つの段階に分かれています。
| 段階 | 求められること |
|---|---|
| 就労開始前まで | A1相当以上の試験への合格、またはA1相当講習を100時間以上受講 |
| 開始から1年以内 | 中間的評価として、A1相当の日本語能力を修得し、試験を受ける |
| 3年間を通じた目標 | A2相当の日本語能力を修得し、試験に合格すること |
ここでいうA1相当とは、日本語教育の参照枠における最初の段階で、日本語能力試験のN5程度が目安です。
A2相当は、日本語能力試験のN4程度が目安となります。
なお、1年目の試験については、合格しなくても育成就労を継続することができます。
講習について、受入れ企業には次の義務があります。
- 就労開始前のA1相当講習は、認定日本語教育機関の「就労」課程を100時間以上受講させること(A1相当の試験に合格済みの場合は受講不要。講習の一部を本国で行うことも可能)
- 3年間のうちに、認定日本語教育機関の「就労」課程のA2相当の講習を100時間以上受講する機会を提供すること(A2相当の試験に事前に合格している場合は不要)
これらの日本語講習とは別に、入国後講習も必要です。
総時間数は、A1相当の試験に合格していない場合は320時間以上、合格している場合は220時間以上とされています。
過去6か月以内に一定時間以上の入国前講習を受けている場合は、それぞれ160時間以上・110時間以上に短縮されます。
なお、施行後当分の間(5年をメド)は、認定日本語教育機関による講習だけでなく、日本語教育機関認定法に基づき登録を受けた登録日本語教員による一定の要件を満たした授業も、A1相当講習・A2目標講習を受講したものとみなすこととされています。
日本語講習はオンラインでの受講も可能ですが、双方向で同時にコミュニケーションを取れるものであることなど、一定の要件を満たす必要があります。
また、講習の費用は育成就労実施者または監理支援機関が負担します。
分野の特性に応じて、より高い水準の日本語能力が設定される場合もあります。
自社の分野の要件は、分野別運用方針でご確認ください。
(出典:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」、同「育成就労制度の制度概要・関係法令」)
家族帯同・前職要件の取扱い
育成就労では、原則として家族の帯同は認められません。この点は技能実習制度と同様です。
一方で、技能実習制度にあった「帰国後従事要件」(帰国後に修得した技能を要する業務に従事することが予定されていること)や「前職要件」(同種の業務に外国で従事した経験があること)は、育成就労制度では求められません。
ただし、単独型育成就労で受け入れる場合には、外国にある事業所で1年以上業務に従事している常勤の職員であることなど、形態に応じた要件が別途設けられています。
なお、育成就労は特定技能へのステップアップを前提とする制度であることから、すでに1号特定技能外国人として通算在留期間の上限まで在留しており、特定技能へ移行する余地がない方などは、育成就労外国人となることができません。
転籍(受入れ機関の変更)のルール

転籍は、育成就労制度で最も注目されている変更点です。受入れ企業にとっては人材の流出リスクにもつながるため、要件を正確に把握しておく必要があります。
やむを得ない事情による転籍
暴力やパワーハラスメントなどの人権侵害を受けた場合や、受入れ企業の倒産などにより就労の継続が困難となった場合の転籍は、技能実習制度から引き続き認められます。
育成就労制度では、この「やむを得ない事情」の範囲が拡大・明確化され、手続も柔軟化されます。
本人の意向による転籍の要件
本人の意向による転籍は、次のような要件をすべて満たす場合に認められます。
- 分野ごとに分野別運用方針で定める一定水準の技能および日本語の能力を修得していること(技能検定試験基礎級等および分野ごとに設定されるA1〜A2相当の日本語能力に係る試験の合格)
- 転籍制限期間を超えて育成就労の対象となっていること
- 転籍に当たって、民間の職業紹介事業者による職業紹介等を受けていないこと
- 転籍先が優良な育成就労実施者であること
- 転籍先が転籍元に対して一定の金額を支払うこととしていること
- 転籍先において受入れ人数枠を超過していないこと
転籍制限期間とは、転籍前の受入れ企業のもとで育成就労を行うことが求められる期間です。
1年とすることを目指しつつ、当分の間は分野ごとに1年から2年の範囲で定められます。
ここで受入れ企業が押さえておくべき点が2つあります。
1つは、分野別運用方針で1年を超える転籍制限期間が定められている分野であっても、育成就労実施者の判断で1年とすることができることです。
もう1つは、その裏返しとして、1年を超える転籍制限期間を用いる場合には、分野別運用方針で定められた育成就労外国人の待遇の向上措置を講じる必要があることです。
長い転籍制限期間を選ぶのであれば、それに見合った処遇が求められる仕組みになっています。
また、転籍先は転籍元と同一の業務区分に限られます。同一の業務区分内であれば、転籍の前後で主たる技能を変更することも可能です。
一度本人意向の転籍を行った後、再度本人意向の転籍をしようとする場合にも、あらためて転籍制限期間が経過している必要があります。
(出典:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」、同「育成就労制度の制度概要・関係法令」)
転籍者を受け入れる側の制限

転籍を受け入れる企業の側にも制限があります。
在籍する育成就労外国人の多くを転籍者が占める状態は、人材育成という制度の趣旨に沿わないためです。
3分の1ルールとして、転籍しようとする外国人を分子・分母の双方に含めたうえで、転籍先の育成就労外国人の総数に占める本人意向の転籍者の総数の割合が、3分の1を超えてはならないとされています。
加えて、転籍先が指定区域の外(大都市圏)にある場合には、指定区域内(地方)から受け入れる本人意向の転籍者の数が育成就労外国人の総数に占める割合について、6分の1という制限も設けられています。
地方から大都市圏への人材流出に配慮した仕組みです。
ただし、この6分の1ルールには例外があります。
転籍者を含めて育成就労外国人が6名未満となる小規模な育成就労実施者は、3分の1ルールを満たす限り、1名まで受け入れることができます。
小規模事業者では、6分の1という割合を機械的に当てはめると1名も受け入れられなくなってしまうためです。
転籍先が転籍元に支払う初期費用
転籍元が受け入れに要した初期費用を、転籍先が補填する仕組みも設けられます。
金額は、主務大臣が告示で定める額に、転籍元での就労期間に応じた按分率を乗じて算出されます。
| 転籍元が育成就労を行わせた期間 | 按分率 |
|---|---|
| 1年6月未満 | 6分の5 |
| 1年6月以上2年未満 | 3分の2 |
| 2年以上2年6月未満 | 2分の1 |
| 2年6月以上 | 4分の1 |
按分率の枠組みは決まっていますが、基準となる告示の金額は2026年7月時点では制定されていません。
入管庁は今後制定する予定としており、受入れコストの見積もりに直結する未確定事項として、続報を確認しておく必要があります。
なお、転籍をめぐって当事者間に争いが生じた場合の対応は、弁護士の業務領域となります。
受入れ企業(育成就労実施者)に求められる要件

育成就労外国人を受け入れる企業は「育成就労実施者」と呼ばれます。
技能実習制度の要件を引き継ぎつつ、新たに追加された要件もあります。
新たに設けられた主な要件
入管庁が示している新たな要件には、次のようなものがあります。
- 過去1年以内に、自社または監理支援機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと
- 過去1年以内に、育成就労外国人に従事させる業務と同種の業務に従事していた労働者を離職させていないこと(自発的に離職した者等を除く)
- 労働、社会保険および租税に関する法令を遵守していること
- 送出機関等から社会通念上相当と認められる程度を超えて金銭等の供与を受けていないこと
- 育成就労外国人と雇用契約を締結するに当たり、労働条件等の待遇の説明を直接またはオンラインで行っていること
- 受入れ対象分野別の協議会に加入していること
待遇面では、報酬の額が日本人と同等以上であること、育成就労外国人であることを理由に差別的な取扱いをしていないこと、一時帰国を希望した場合に必要な有給休暇を取得させること、適切な宿泊施設を確保していることなども求められます。
(出典:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」、同「育成就労制度の制度概要・関係法令」)
社会保険の適用関係については、外国人の社会保険の記事もあわせてご覧ください。
なお、個別の労務管理や社会保険の手続に関するご相談は、社会保険労務士の業務領域となります。
養成講習の受講が義務化される点にご注意ください
見落とされやすいのが、社内体制に関する変更です。
技能実習制度では、技能実習指導員と生活指導員が養成講習を受講していることは、優良な実習実施者を判断する際の加点ポイントであって義務ではありませんでした。
育成就労制度では、育成就労責任者と同様に、育成就労指導員と生活相談員についても、過去3年以内の養成講習の受講が義務とされます。
ただし、当分の間は、技能実習制度の養成講習によって代替することが予定されています。
現在の受講状況を早めに棚卸ししておくことをおすすめします。
受入れ人数枠と「指定区域」
育成就労制度では、育成就労実施者の常勤職員数に応じた受入れ人数枠が設けられます。
1号から3号までの区分が廃止されたことに伴い、1年目から3年目までの育成就労外国人の合計で人数枠が定められる点が、技能実習制度と異なります。
そのため、同一の事業年度に人数枠の上限まで受け入れることも可能です。
人数枠は、次の3段階で拡大する構造になっています。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| ①一般の育成就労実施者 | 基本人数枠 |
| ②優良な育成就労実施者 | 基本人数枠より拡大 |
| ③優良な監理支援機関の監理支援を受け、かつ指定区域に住所がある優良な育成就労実施者 | ②よりさらに拡大 |
注意していただきたいのは、具体的な人数が常勤職員数ごとの表で定められている点です。
「基本人数枠の3倍」といった説明を見かけることがありますが、これは常勤職員数が一定以上の場合の倍率で、常勤職員数が少ない企業では倍率がこれより小さくなります。
自社の上限は、必ず入管庁が公表している人数枠の表でご確認ください。
また、単独型と監理型では人数枠の考え方が異なります。
単独型については、継続的かつ安定的に育成就労を実施することができる体制を有する場合を除き、指定区域による特例は設けられていません。
単独型での受入れを検討される場合は、この点にご注意ください。
指定区域は、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・愛知県・大阪府・京都府・兵庫県以外の道県と、この8都府県のうちの一部の地域とされています。
指定区域にあるかどうかは、育成就労実施者の本店所在地によって判断されます。
もう1点、経過措置との関係にも注意が必要です。
人数枠の計算においては、経過措置により引き続き技能実習を行っている1号技能実習生と2号技能実習生の数も、育成就労外国人の数として数えます。
施行直後は技能実習生と育成就労外国人が併存するため、想定より枠が窮屈になる可能性があります。
なお、やむを得ない事情により転籍した方や、3年を超えて育成就労を延長している方などは、人数枠の規制に含めないものとされています。
(出典:出入国在留管理庁「育成就労制度の制度概要・関係法令」)
監理支援機関の許可基準の厳格化

監理支援機関の体制に関する許可基準として、次のような要件が新たに設けられました。
- 外部監査人を設置していること
- 債務超過がないこと
- 監理支援を行う受入れ機関の数が原則として2者以上であること
- 監理支援事業の実務に従事する常勤の役職員が2人以上であり、かつ、監理支援を行う受入れ機関の数を8で割った数と、監理支援を行う育成就労外国人の数を40で割った数を、いずれも当該役職員の数が上回っていること
外部監査人となるための要件には、養成講習を受講していることに加え、弁護士、社会保険労務士、行政書士の有資格者その他育成就労の知見を有する者であること、監理支援を行う育成就労実施者と密接な関係を有さないことなどが含まれています。
施行までのスケジュールと技能実習生の経過措置

施行日は2027年4月1日ですが、準備のための手続はすでに始まっています。
ここでは制度の整備状況と、現在受け入れている技能実習生の取扱いを整理します。
これまでの経緯と今後の予定
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2024年(令和6年)6月21日 | 令和6年法律第60号 公布 |
| 2025年(令和7年)9月30日 | 主務省令 公布 |
| 2026年(令和8年)1月23日 | 分野別運用方針 閣議決定 |
| 2026年(令和8年)2月20日 | 育成就労制度運用要領 公表 |
| 2026年(令和8年)4月6日 | 育成就労制度運用要領 更新(以降、分野別の上乗せ基準告示を順次公表) |
| 2026年(令和8年)4月15日 | 監理支援機関の許可に係る施行日前申請 受付開始 |
| 2026年(令和8年)9月1日 | 育成就労計画の認定に係る施行日前申請 受付開始 |
| 2027年(令和9年)4月1日 | 施行(育成就労外国人の受入れ開始) |
施行日前申請の詳細は、外国人技能実習機構のホームページで案内されています。
監理支援機関の許可には準備期間を要しますので、受入れを予定される企業様は、取引のある監理団体の許可取得状況を早めに確認されることをおすすめします。
今受け入れている技能実習生はどうなるか
施行日である2027年(令和9年)4月1日の時点で既に来日している技能実習生については、原則として引き続き認定計画に基づいて技能実習を続けることができます。
施行日以降に技能実習を開始する場合には、期限が2つある点にご注意ください。
- 2027年3月31日までに技能実習計画の認定申請を行うこと(施行日以降は認定申請ができません)
- 実習開始日が2027年6月30日以前であり、原則として同日までに入国すること
施行日より前に技能実習計画の認定と在留資格認定証明書の交付を受けている場合も、2027年6月30日までに入国する必要があります。
なお、施行日前に申請した在留資格認定証明書が施行日後に交付された場合は、交付日から3か月以内に入国する必要があるとされています。
実習開始日を6月30日以前に設定していれば入国が後日でもよい、というわけではありませんので、逆算した渡航スケジュールの確認が必要です。
技能実習3号への移行については、特にご注意ください。
施行日以降に技能実習3号へ進むためには、2027年4月1日の時点で技能実習2号の活動を1年以上行っていることが必要です。
そして、この「1年以上」は、在留資格変更許可日から1年以上技能実習を行っているかどうかで判断されます。
このため、技能実習3号に移行するには、遅くとも2026年(令和8年)4月1日には技能実習2号の活動を開始している必要があります。
この日はすでに経過していますので、現時点で2号を開始していない技能実習生については、3号への移行ができない見込みです。
該当する方がいらっしゃる場合は、育成就労制度への切り替えを含めた計画の見直しが必要になります。
このほか、施行日以降も技能実習1号から2号への移行、在留期間の更新、技能実習計画の変更認定は可能です。
ただし、施行日以降に「技能実習」以外の在留資格に変更した場合、「技能実習」に戻ることはできません。
(出典:出入国在留管理庁「育成就労制度の施行に伴う技能実習の経過措置について」、同「技能実習3号移行リーフレット」)
なお、施行日後も技能実習生を受け入れている場合、監理団体の許可の有効期間の更新が必要となりますが、監理支援機関の許可を受けている場合には、技能実習制度における一般監理事業に係る許可を受けたものとみなされます。
この場合、別途、監理団体の許可の有効期間を更新する必要はありません。
移行期に注意したいトラブル・リスク

制度の切り替わり時期は、確認漏れによるトラブルが生じやすい局面です。
ここでは、企業のご担当者様に特に注意していただきたい3つのケースを挙げます。
【ケース1】分野・業務区分の該当性を取り違える
自社の業種名が17分野のいずれかに近いというだけで受入れが可能と判断してしまうケースです。
前述のとおり、必須業務に全体の就労時間の3分の1以上、安全衛生に係る業務に10分の1以上従事させる必要があるため、実態としてその水準を満たせるかどうかまで確認しなければなりません。
在留資格の区分と実際の業務内容の整合性は、就労系の在留資格全般に共通する重要な論点です。
「技術・人文知識・国際業務」から「特定技能」へ変更した事例も参考になります。
※個別事案により判断は異なります。
【ケース2】在留資格の切替え漏れによる不法就労リスク
育成就労の期間満了後に特定技能1号への移行手続が間に合わず、資格のない状態で就労させてしまうケースが懸念されます。
外国人を雇用する際は、在留カードで在留資格と在留期限を必ず確認してください。不法就労であることを知らなかった場合でも、確認を怠った過失が認められれば、不法就労助長罪に問われる可能性があります。
なお、不法就労助長罪の法定刑の引上げも、育成就労制度と同じ令和6年法律第60号に含まれています。
現行の法定刑は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科も可能)ですが、2027年(令和9年)4月1日の施行後は5年以下または500万円以下に引き上げられます。
育成就労制度の開始と同時に、外国人雇用に関する企業の責任はより重くなります。
(出典:出入国在留管理庁「改正法の概要(育成就労制度の創設等)」)
【ケース3】キャリアパス設計の前提を誤る
育成就労は3年で終わる制度ではなく、特定技能へ接続することを前提とした制度です。移行後にどのような働き方が可能になるかを見据えた設計が求められます。
特定技能から他の在留資格へ変更された事例もあります。
「特定技能」から「経営管理」へ変更した事例や、インドネシア国籍の方が「特定技能」から「経営管理」へ変更した事例をご参照ください。
※個別事案により判断は異なります。
よくあるご質問
育成就労制度についてよくいただくご質問にお答えします。
Q1:育成就労制度はいつから始まりますか?
2027年(令和9年)4月1日からです。
実際に育成就労外国人を受け入れられるようになるのも、この日からとなります。
Q2:今受け入れている技能実習生は2027年4月以降どうなりますか?
2027年4月1日の時点で既に来日している技能実習生は、引き続き認定計画に基づいて技能実習を続けることができます。
技能実習3号への移行を予定されている場合は、同日時点で技能実習2号の活動を1年以上行っている必要があり、その判断は在留資格変更許可日から1年以上かどうかで行われます。
Q3:育成就労で家族を日本に呼ぶことはできますか?
原則として家族の帯同は認められていません。
将来的に特定技能2号へ移行された場合には、要件を満たすことで家族の帯同が可能となる場合があります。
Q4:転籍はいつからできますか?
分野ごとに定められた転籍制限期間を経過し、技能・日本語能力の水準などの要件を満たした場合に、本人の意向による転籍が可能となります。
転籍制限期間は、当分の間、分野ごとに1年から2年の範囲で定められます。
Q5:何人まで受け入れることができますか?
常勤職員数に応じた受入れ人数枠が定められています。
優良な育成就労実施者と認められる場合や、指定区域に所在し優良な監理支援機関の監理支援を受ける場合には枠が拡大されますが、拡大の幅は常勤職員数によって異なり、単独型と監理型でも考え方が異なります。
具体的な人数は入管庁が公表している人数枠の表でご確認ください。
Q6:どの国からでも受け入れることができますか?
いいえ。悪質な送出機関の排除に向けた取組を強化するため、原則として、二国間取決め(協力覚書)を作成した国からのみ受け入れることができます。
2026年7月時点では、タイおよびウズベキスタンとの協力覚書が作成されています。
協議中の国については、政府間の協議であることから具体的な国名は公表されていませんが、送出機関となることが見込まれる機関のリスト(暫定送出機関リスト)が提出されている場合には、外国人技能実習機構のホームページで公開されます。
締結国は今後増える見込みですので、最新の状況は同機構のホームページでご確認ください。
Q7:育成就労と特定技能は、どちらで採用を検討すべきでしょうか?
すでに技能や日本語能力の要件を満たしている方を採用したい場合は特定技能1号、時間をかけて自社で育成したい場合は育成就労が想定されます。育成就労は3年間の育成計画の作成と認定が前提となるため、体制面の準備がより多く必要になります。
自社の人材ニーズと受入れ体制の両面から検討されることをおすすめします。
まとめ

育成就労制度について、要点を整理します。
- 育成就労制度は、3年間の就労を通じて特定技能1号水準の人材を育成する制度です
- 根拠法は令和6年法律第60号で、施行日は2027年(令和9年)4月1日です
- 対象は育成就労産業分野17分野で、特定技能の19分野とは範囲が異なります
- 受入れ人数枠は常勤職員数ごとの表で定められており、単独型と監理型で考え方が異なります
- 一定の要件の下で本人の意向による転籍が認められ、1年を超える転籍制限期間を用いる場合は待遇の向上措置が必要です
- 日本語の要件は、就労開始前・1年以内・3年間の目標の3段階に分かれています
- 技能実習3号への移行には、2026年4月1日までに2号を開始している必要があります
施行日前申請はすでに始まっており、受入れを予定される企業様にとっては準備を進める時期に入っています。一方で、転籍時の費用に関する告示や優良要件の具体的な基準など、今後定められる事項も残されています。最新の情報は入管庁の公式サイトでご確認ください。
外国人雇用に関する在留資格のご相談は、さむらい行政書士法人までお問い合わせください。
※本記事は2026年7月時点の入管法令・公開情報をもとに作成しています。法令改正等により内容が変更される可能性があるため、最新の情報は出入国在留管理庁の公式サイト等でご確認ください。個別の事案については弁護士・行政書士等の専門家へのご相談を推奨します。

